にんにく農家が解説する「にんにくの肥料」の選び方
にんにくの肥料は何を、いつ、どのくらい与えればよいのでしょうか。青森県で20年以上にんにくを栽培する専門農家が、元肥と追肥の違い、有機肥料と化成肥料、肥料不足・肥料過多の見分け方、少雨年の注意点まで解説します。
にんにくの肥料は、植え付け前に施す「元肥」を基本に考えます。にんにくは植え付けから収穫までの期間が長いため、すぐに効き切る肥料ではなく、長期間にわたってゆっくり効く肥料が向いています。
窒素だけを多く与えるのではなく、リン酸、カリ、カルシウム、マグネシウムなどを含め、土の状態に合わせてバランスを整えることが重要です。
マルチ栽培では、植え付け前の元肥を適切に設計することで、追肥をせずに収穫まで育てる方法もあります。
青森県で20年以上にんにくを栽培している株式会社よしだやでは、基本的に追肥を行わず、元肥を中心とした肥料設計を行っています。ただし、適切な肥料の種類や量は、土質、土壌pH、堆肥の使用量、降雨量、栽培地域によって変わります。
【にんにくの肥料は元肥が重要】
にんにくは、植え付けから収穫まで長い期間をかけて育つ作物です。
青森県では、秋に植え付けたにんにくが冬を越し、春に再び生育して、初夏に収穫を迎えます。そのため、短期間だけ効く肥料ではなく、根や葉の生育から球の肥大までを支えられる肥料設計が必要です。
にんにくの施肥方法には、大きく分けて次の2つがあります。
- 植え付け前に元肥を施し、春に追肥する方法
- 長期間効く元肥を施し、基本的に追肥を行わない方法
どちらが正しいということではありません。地域の気候、積雪、土質、マルチの有無、使用する肥料によって適した方法が異なります。
株式会社よしだやでは、マルチ栽培を行い、基本的に追肥をせず、植え付け前の元肥で収穫まで育てる肥料設計を採用しています。
【にんにくに必要な主な肥料成分】
にんにくを育てるうえでは、窒素、リン酸、カリだけでなく、カルシウムやマグネシウム、微量要素も重要です。
窒素
窒素は、主に葉や茎の生育に関係します。
不足すると葉色が薄くなり、生育が弱くなることがあります。一方で、多すぎると、春腐病が発生しやすくなったり、分結に異常が生じます。
にんにくを大きくしたいからといって、窒素を多くすればよいわけではありません。
リン酸
リン酸は、根の生育や初期生育、球の肥大などに関係します。
カリ
カリは、植物体内の水分調整や、病害・環境ストレスへの抵抗力などに関係します。
不足すると葉先が枯れたり、生育が弱くなったりすることがあります。ただし、葉先の枯れは乾燥、根傷み、塩類濃度、病気などでも起こります。
カルシウム
カルシウムは、植物の細胞の健全な生育に関係します。
カルシウム資材を施していても、乾燥や根傷みがあると植物が十分に吸収できないことがあります。土にカルシウムが存在することと、実際に作物が吸収できることは同じではありません。
マグネシウム
マグネシウムは、葉緑素の構成成分であり、光合成に関係します。
不足すると、葉脈の間が黄色くなるなどの症状が出る場合があります。ただし、目視だけで欠乏症を断定せず、土壌や根の状態も含めて判断します。
【にんにくの肥料はいつ与えるのか】
植え付け前
にんにくの肥料は、基本的に植え付け前に土へ混ぜ込みます。
肥料の種類にもよりますが、堆肥、石灰、元肥を施した直後に植え付けるのではなく、一定期間を置いて土になじませる方法があります。
ただし、施肥から植え付けまでに必要な期間は、資材の種類によって異なります。
未熟な堆肥や、根に刺激を与えやすい資材を使用する場合は十分な期間をあけるよう注意が必要です。
植え付け時
肥料が種にんにくや根へ直接集中して触れると、根傷みや生育障害につながる場合があります。
肥料は一か所に固めず、土全体へなるべく均一に混ぜます。
越冬前
寒冷地では、冬になる前に葉を2~3枚程度と必要以上に伸ばしすぎないことも重要です。
窒素が早く効きすぎると、地上部が過剰に生育する場合があります。気温や植え付け時期に合わせて、肥料の効き方を考えます。
春の生育再開期
追肥型の栽培では、春の生育再開期に追肥を行うことがあります。
ただし、元肥一発型の肥料を使用している場合や、元肥で必要量を確保している場合は、必ずしも追肥が必要とは限りません。
球の肥大期以降
収穫に近い時期の窒素追肥は、球の成熟を遅らせたり、二次成長や品質低下につながったりする可能性があります。
遅い時期に葉色が薄くなったからといって、必ず追肥が必要とは限りません。
にんにくは収穫期が近づくと、自然に葉が黄変していきます。
【元肥と追肥はどちらがいいのか】
元肥と追肥のどちらを選ぶかは、栽培方法によって変わります。
追肥を行う方法
速効性の肥料を使用する場合や、元肥を控えめにした場合は、春に生育を見ながら追肥を行います。
生育に合わせて調整できる点が利点ですが、追肥の時期や量を間違えると、肥料過多や肥効の遅れにつながることがあります。
元肥一発で育てる方法
長期間ゆっくり効く肥料を使い、植え付け前に必要な肥料を施す方法です。
マルチ栽培では、栽培途中に肥料を土へ混ぜにくいため、元肥一発型が適している場合があります。
株式会社よしだやでは、基本的に元肥で肥料設計を行い、追肥は行っていません。
ただし、元肥一発栽培では、土壌条件や天候を予測して事前に肥料を設計する必要があります。どの畑でも同じ量を入れればよいわけではありません。
【にんにくの肥料の量はどのくらいか】
にんにくの肥料量は、土の状態や使用する肥料によって変わります。
「1平方メートル当たり何グラム」といった標準量は一つの目安にはなりますが、次の条件によって必要量は変わります。
- 前作で使用した肥料
- 堆肥の種類と量
- 土壌中の窒素、リン酸、カリの残量
- 土壌のCEC
- 土壌pH
- 土質
- 降雨量
- 排水性
- マルチの有無
- 栽培地域
- 使用する肥料の成分量
- 肥料が効き続ける期間
特に、堆肥や鶏糞を施したうえで、一般的な基準量の化成肥料をそのまま加えると、成分が重複することがあります。
肥料袋に記載された使用量を基本としながら、すでに施した堆肥や土壌改良資材の成分も考慮してください。
農業者の場合は、可能であれば土壌分析に基づいて施肥設計を行うことをおすすめします。
【肥料を与えすぎるとどうなるのか】
にんにくへ肥料を多く与えても、必ず大きくなるわけではありません。
肥料過多(特に窒素過多)では、次のような問題が起こることがあります。
- 葉ばかりが大きくなる
- 葉や茎が軟弱になる
- 病気が発生しやすくなる
- 根が傷む
- 土壌の塩類濃度が高くなる
- 球の成熟が遅れる
- 二次成長が起こる
- 球割れが起こる
- 収穫後の日持ちが悪くなる
- 収穫適期を判断しにくくなる
肥料のやりすぎが疑われる場合、さらに肥料を追加するのは避けます。
葉の色、生育、根の状態、土の水分、pH、ECなどを確認し、原因を切り分けます。
【有機肥料と化成肥料はどちらがいいのか】
有機肥料と化成肥料には、それぞれ特徴があります。
有機肥料
有機肥料は、土の中の微生物によって分解され、作物が吸収できる形になってから効きます。
土づくりに役立つ一方で、温度や水分によって肥料の効き方が変わります。
気温が低い時期や雨が少ない年は、分解が進まず、想定より肥料が効かないことがあります。
化成肥料
化成肥料は、含まれる成分量が明確で、肥料設計を行いやすいという特徴があります。
有機肥料よりも効き方を予測しやすい製品が多く、被覆肥料など、一定期間ゆっくり溶け出すものもあります。
ただし、量が多すぎれば根傷みや塩類障害などの原因になります。
実際の栽培で感じた違い
株式会社よしだやでは、雨が少なかった年に、有機ぼかし肥料を中心に使用した圃場で小玉傾向が見られた一方、化成肥料を組み合わせた圃場では例年に近い作柄になった経験があります。
これは、少雨によって有機肥料の分解が進まず、必要な時期に肥料が十分に効かなかった可能性があると考えています。
ただし、これは一つの栽培事例であり、すべての畑に同じ結果が当てはまるわけではありません。
有機肥料と化成肥料のどちらか一方を良い・悪いと判断するのではなく、土壌、気候、栽培方法に合わせて組み合わせることが現実的です。
【雨が少ない年は肥料の効き方が変わる】
肥料は、土壌中の水分と深く関係しています。
雨が少なく土が乾燥すると、肥料成分が土壌水分へ溶けにくくなり、根まで移動しにくくなります。
特に有機肥料は、微生物による分解に水分が必要です。乾燥が続くと分解が遅れ、必要な時期に肥効が現れない場合があります。
被覆肥料や化成肥料も、水分が全くなければ十分に溶け出すことはできません。ただし、有機物の分解を必要としないため、有機肥料より肥効を予測しやすい場合があります。
少雨年は、肥料を増やすことだけで解決しようとせず、土壌水分の確保、根張り、排水性と保水性のバランスを含めて考える必要があります。
【石灰、炭、ゼオライトと肥料は併用できるのか】
石灰、炭、ゼオライトなどは、主に土壌の状態を整えるために使用されます。土壌改良剤と呼ばれる資材です。
石灰
石灰資材は、主に酸性土壌のpH調整や、カルシウム・マグネシウムの補給に使用します。
土壌pHを確認せずに大量に施すと、pHが上がりすぎ、微量要素が吸収されにくくなる場合があります。
炭
炭は、土壌の物理性や保水性、微生物環境などを整える目的で使用されます。
製品によって性質が大きく異なるため、使用量やpHを確認します。
ゼオライト
ゼオライトは、保肥力の改善などを目的に使用されます。
ただし、ゼオライト自体を施すだけで、にんにくに必要なすべての肥料成分を補えるわけではありません。
これらの資材と肥料は、基本的には併用できます。ただし、それぞれの成分やpHを確認し、同じ成分を重複して入れすぎないようにします。
【にんにく専用肥料「GARIX」とは】
GARIXは、株式会社よしだやが、実際のにんにく栽培経験をもとに開発した家庭菜園向けのにんにく専用ぼかしミックス肥料です。
植え付け前に使用する元肥として設計しています。
有機ぼかし肥料をベースとし、にんにく栽培に必要な成分を考えて配合しています。
GARIXは、次のような方におすすめです。
- にんにくに何の肥料を使えばよいか分からない
- 複数の肥料を自分で配合するのが難しい
- 元肥を中心に育てたい
- 家庭菜園でも専門農家の考え方を取り入れたい
- 堆肥や土壌改良資材と組み合わせて使いたい
GARIXは肥料であり、堆肥、炭、ゼオライトなどの土壌改良資材とは役割が異なります。
すでに堆肥や土壌改良資材を使用している場合も、基本的には併用できます。ただし、堆肥自体に多量の肥料成分が含まれる場合は、全体の施肥量に注意してください。
土壌pHが低い場合は、土壌分析やpH測定を行い、必要に応じて石灰資材などを組み合わせます。
GARIXを使用しただけで、すべての畑が同じ結果になるわけではありません。土の状態、水分、日当たり、植え付け時期、種にんにくの状態なども生育に影響します。
【よくある質問】
にんにくにはどんな肥料が適していますか
植え付けから収穫までの長い栽培期間に合わせて、ゆっくり効く元肥が適しています。窒素だけでなく、リン酸、カリ、カルシウム、マグネシウムなどを含め、土の状態に合わせてバランスを整えることが重要です。
にんにくの肥料はいつ与えますか
基本は植え付け前です。追肥を行う栽培では、春の生育再開期に与えることがあります。元肥一発型では、植え付け前の施肥だけで収穫まで育てる場合もあります。
にんにくに追肥は必要ですか
必ず必要ではありません。元肥の種類と量、マルチの有無、地域、土壌条件によって変わります。株式会社よしだやでは、基本的に追肥を行わず、元肥を中心に栽培しています。
【にんにくを大きくするには肥料を多くすればいいですか】
肥料を多くすれば大きくなるわけではありません。肥料過多になると、葉の過繁茂、根傷み、病気、二次成長、成熟の遅れなどにつながる場合があります。
【にんにくの葉が黄色い場合は追肥したほうがいいですか】
葉が黄色い原因は、肥料不足だけではありません。過湿、乾燥、根傷み、低温、病気、収穫前の自然な黄変でも黄色くなります。原因を確認せずに追肥するのは避けます。
【有機肥料だけでにんにくを育てられますか】
育てることはできます。ただし、有機肥料は気温や土壌水分によって分解速度が変わります。低温や少雨では、必要な時期に十分に効かないことがあります。
【鶏糞はにんにくの肥料に使えますか】
使用できますが、製品によって成分や性質が異なります。特にリン酸の過剰、未熟鶏糞、施用量、他の肥料との重複に注意してください。
【堆肥とGARIXは一緒に使えますか】
基本的には併用できます。ただし、堆肥に含まれる肥料成分を確認し、全体の肥料量が過剰にならないようにしてください。
【GARIXを使えば追肥は不要ですか】
GARIXは一発用の元肥として設計しています。ただし、生育結果は、土壌、使用量、水分、気候、植え付け時期などによって変わります。記載された使用方法を守り、畑の状態を確認しながら使用してください。






